一枚の絵を通じてたどり着く「いつか還る場所」
見る者をゆがめ、正すという絵に秘められたある一族の秘密。

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STORY

あらすじ

ある事件をきっかけに報道局からイベント事業部に異動することになったテレビ局員、守谷京斗(もりや・きょうと)。異動先で出会った吾妻李久美(あづま・りくみ)が祖母から譲り受けた、作者不明の不思議な古い絵を使って「たった一枚の展覧会」を実施しようと試みる。ところが、許可を得ようにも作者も権利継承者もわからない。手がかりは絵の裏に書かれた「イサム・イノマタ」の署名だけ。守谷は元記者としての知見を活かし、謎の画家の正体を探り始める。だがそれは、秋田のある一族が、暗い水の中に沈めた秘密に繫がっていた。
1945年8月15日未明の秋田・土崎空襲。
芸術が招いた、意図しない悲劇。
暴走した正義と、取り返しのつかない後悔。
長年秘められてきた真実は、
一枚の「絵」のミステリから始まっていた。

戦争、家族、仕事、芸術……すべてを詰め込んだ作家・加藤シゲアキ「第二章」のスタートを彩る集大成的作品。 「死んだら、なにかの熱になれる。すべての生き物の成れの果てだ」

PV

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INTERVIEW

インタビュー

REVIEW

書評

加藤もまた社会を見つめて、書き続けるという道を選んだ。 それは変化を受け止めるということでもある。 作家としての道を続けることにも、表現を続けることにも個人としての 責任が伴う。 時に大きな困難はあっても言葉を紡ぎ続ける責任を引き受けた――。 『なれのはて』は、現時点での彼の覚悟の結晶である。 そんな評価がいずれついてくるだろう。

ノンフィクションライター石戸諭

人の心を知りたいという作者の強い願いを感じる。加藤シゲアキ『なれのはて』はそういう小説である。これまでの加藤作品では、誤解を恐れずに言えば主人公は作者の分身であった。 世界はなぜこうなのか、自分はどうしてこのようにしか生きられないのか、という疑問を抱えた人物が出来事に対処していくという物語である。
他者には他者の論理があり、生きるための姿勢は自分とまったく異なる。加藤はそのことを理解し、小説の形で表現しようとした。
行間から作者の声が聞こえてくるようだ。あなたを知りたい、心から。そう呟いている。

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書評家杉江松恋

本書を読みながら思い出していたのは、大江健三郎『万延元年のフットボール』や中上健次『枯木灘』、あるいはフォークナーの『アブサロム、アブサロム』やガルシア=マルケスの『百年の孤独』などの大作群だった。
といっても、『なれのはて』が世界文学を目指して書かれた小説だと言いたいわけではない。本書はあくまでも、抜群にリーダビリティの高いエンターテインメントのかたちをとって、この百年の日本の現代史を背景に、ある一族の来歴を解き明かしていく。
ある登場人物いわく、「ここを作った人の血は俺にもおめにも流れてる。ほじなしだが、たったひとりでこれを成し遂げた、すったげすげ人だ。俺らにもその血があんだ」
加藤シゲアキは、激動の歴史とどうしようもない人間たちのドラマを重ね合わせ、読み応えたっぷりの一大エンターテインメントに結実させた。
新たな代表作と呼ぶにふさわしい傑作だ。

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書評家大森望

なんという物語だろう。読み終わって、深いため息が洩れる。ミステリーという衣を纏いながらも、本書で描かれているのは、ままならぬ時代を生きた人々の哀しみであり、家族の血の柵であり、時を超えた友情であり、叶わなかった愛の形見である。
「なれのはて」というタイトルの意味は、本書を読んで、実感して欲しい。
そして、それが意味することの深さを、重さを、胸の中に沈めて欲しい。

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書評家吉田伸子

COMMENT

書店員コメント

どれだけの取材や調べ物をして、ここにたどり着いたのでしょう。「書きたい」「書かなければ」という想いが伝わってくる戦争のシーンはまるで見てきたかのような悲惨さで、切なさがこみあげてきました。まさにこれは『加藤シゲアキの第二章のスタート』というキャッチコピーに偽りのない最高傑作ですね!

(伊吉書院類家店中村深雪さん)

凄まじい引力を持った作品。加藤シゲアキという作家の果てしない才能にこの業界の未来を預けてみたくなった。

(有隣堂藤沢本町トレアージュ白旗店小出美都子さん)

掛け替えのない善良が罪の連鎖に変わったとき、誰が負のピリオドを打てるのだろうか。生き続ける罪悪感と確かな幸福を引き受けるには荷が重すぎた者達の苦悩が心を打つ。 それでも譲れない良心のために、独り時代に抗い、手を携えて時を待つ。著者の熱くも静かな挑戦を、読者は引き受けるべきではないだろうか。

(大盛堂書店山本亮さん)

ものすごく没頭し、400ページ超えをいつのまにか一気に読み終わっていた。 新しい著者の代表作。作家加藤シゲアキの新たな旅立ち。誰にも何も言わせないすごい作品を大切に売っていきたい。

(ジュンク堂書店滋賀草津店山中真理さん)

序盤から様々な角度から問いかけられている。そんな作品でした。 読んだ立場として、答えを見つけなきゃいけないと思いました。 わたしも含めて、読んだ人が何かしらの答えを出してくれることを願います。

(大垣書店高槻店門石藍さん)

私は小説をあまり読まない。しかし今回、1冊の物語を読み切ることとなる。読み進めていくうちに、登場人物の行動・心情の一つ一つが面白くなり、ページをめくる手が止まらなかった。主要人物のハッピーエンドを願いつつ、5時間かけて一気に読んでしまった。全ての人物がぶちあたるかもしれない不条理や理不尽を、それぞれが苦しみながらも乗り越えていく。最後の一文まで読んだときには、加藤シゲアキという作家に出会えたことに感動を覚えた。

(うさぎや栃木城内店若山尚美さん)

謎の画家が描いた、一枚の絵の真実に辿り着いた時、張り詰めた空気に包まれ、時が止まるようでした。 激動の時代を生きた人々の、熱い息づかいを肌で感じる壮大な人間ドラマ。 形容できない、大きく深い渦に巻き込まれるように、気づいたら必死にページをめくっていました。

( 紀伊國屋書店福岡本店宗岡敦子さん)

事実はこのうえなく哀しいけれどそこに生きる人たちが誰も不幸にならない結末が救い。加藤シゲアキさんはもう作家業を語る際にアイドルという肩書は不必要だと思う。凄い作品を読んだ。

(有隣堂町田モディ店原田明美さん)

最後は実際に美しい絵画を観た後のように心があたたかく、それでいて興奮もなかなか冷めず、とにかく涙が流れました。

(宮脇書店気仙沼泉田まゆさん)

終戦直後の人々の絶望は現代の日本にも通ずるものを感じた。その中でも必死にもがき一筋の希望の光を求める人間も必ずいる。「なれのはて」にあるものは絶望だけではない。そう前を向かせてくれる一冊。作家加藤シゲアキ氏にありがとうと言いたい。

(ジュンク堂書店秋田店今野圭一さん)

ラスト、涙が溢れ出ました。 なんて美しい。
加藤シゲアキ、最高傑作。 これは凄まじい1冊です。

(文真堂書店ビバモール本庄店山本智子さん)

今まさに、わたしはすごい作品に出会っている。この作品の持つ力と熱量に圧倒され続けた。

(未来屋書店明石店大田原牧さん)

自分のなれのはては「なに」だろうか 執筆活動だけではない3年という月日をかけて生まれたこの作品をいま世に放つという意義に敬意を。

(紀伊國屋書店鹿児島店吉井文代さん)

描いて、救われたのか。描かずにはいられなかったのか。ページをめくっているはずなのに私の前にはキャンバスがあり、手にはアクリルがこびりついているような心持ちでした。加藤シゲアキをもう誰もアイドルが小説を書いているとは言わないでしょう。ここには紛れもない人生があり、物語がありました。

( 成田本店みなと高台店櫻井美怜さん)

バラバラに見えたたくさんの要素が少しずつまとまり、最後に1つになっていく様子はまさに圧巻。胸をつく描写の数々に、痛いと思いながらも目をそらすことは出来ませんでした。そしてラストの感動と言ったらもう……言葉に出来ず、ただただ感嘆のため息を吐きました。ぜひともたくさんの人に読んで欲しい、読んだ人と語り合いたい傑作です。

(田村書店吹田さんくす店村上望美さん)

圧倒された。複雑な物語でありながら、対比が効果的に用いられており読ませる力がある。東京のメディアと秋田の農村、報道部とイベント事業部、終戦前後と現代、そして父と子、兄と弟。自らが生きる道を得るため、闘いを繰り返す者たちが丹念に描かれている。生まれた時代や環境のため「そう生きざるを得ない」者たちによる熱い物語だ。前作と全く違う作風を持つ大作であり、傑作。

(HMV&BOOKS OKINAWA中目太郎さん)

PROFILE

プロフィール

加藤シゲアキ

1987年生まれ、大阪府出身。青山学院大学法学部卒業。2012年1月『ピンクとグレー』で作家デビュー。2021年『オルタネート』で第42回吉川英治文学新人賞、第8回高校生直木賞を受賞。「NEWS」のメンバーとして活躍しながら作家としても精力的な活動を続けており、評価を高めている。他の著書に『閃光スクランブル』『Burn.−バーン−』『傘をもたない蟻たちは』『チュベローズで待ってるAGE22・AGE32』(全2冊)、エッセイ集などに『できることならスティードで』『1と0と加藤シゲアキ』がある。

撮影:羽田誠/スタイリスト:十川ヒロコ/ヘアメイク:KEIKO(Sublimation)/アートディレクション:高倉健太(GLYPH Inc.)

加藤シゲアキさんのコメント

前作『オルタネート』の執筆時から考えていた本作が、構想からおよそ3年の歳月を経てついに完成しました。

『なれのはて』は自著のなかで最も壮大なテーマに挑んだエンタメ作品であり、また問題作でもあると考えています。

三十代半ばとなる(なった)私が何を書くべきか、問い続けた結果がこの作品です。

舞台を2019年の東京と、私の母の地元である秋田にしたのは、私自身がこの物語に深く没入するためでしたが、その過程で日本最後の空襲のひとつといわれる土崎空襲を知り、自分がこの小説を書く宿命を感じました。

この小説を書いたのは本当に自分なのか、それとも何か見えざるものによって書かされたのか。今はそういった不思議な気分です。

作家活動が十年を超えた今だからこそ、全身全霊で書き上げることができました。

一枚の絵の謎から広がる世界を、どうぞご堪能いただけると幸いです。

BOOK

書籍情報

なれのはて

発行
講談社
判型
四六判ワイド上製
定価
2145円(税込)
ISBN
978-4-06-533143-9